転倒検知AIによる見守りシステムの可能性~ケアビジョンの実証実験を通じて~

木村純子様(副施設長:左)× 古賀正靖様(常務理事:中)× 鐘堂徳一様(施設長:右)

AIによる入所者の見守りの実証実験の場をご提供いただきました社会福祉法人正和会「やわらぎの里西多田」のみなさまに実験の意義やこれからの期待について座談会形式でお話をうかがいました。

左:副施設長 木村純子 様~以下(木村様)と表記させていただきます。
中:常務理事 古賀正靖 様~以下(古賀様)と表記させていただきます。
右:施設長 鐘堂徳一 様~以下(鐘堂様)と表記させていただきます。
社会福祉法人正和会常務理事 古賀正靖様

— コロナ禍で、全国の介護施設のロックダウンが続く厳しい環境の中、正和会常務理事の古賀様にはご寛容な姿勢で、ケアビジョン開発のための実証実験にご協力いただきましたこと、あらためまして感謝申し上げます。

古賀様:神戸市役所の懇意にさせていただいている職員の方からのご紹介でしたし、入居者のみなさまやスタッフに寄り添う仕組みのセンシングということで、実証実験に協力させていただきました。AIを使うという試みも新しいと思い協力させていただきました。

— 正和会様はいくつか施設を運営なさっていますが、「やわらぎの里西多田」様を選んでいただきました理由をお聞かせください。

古賀様:実験のご協力をさせていただいた「やわらぎの里西多田」は、“健康増進”をキーワードに積極的に先進機器や設備を導入していますし、スタッフも先進技術導入に積極的なんでね、AIを使ったまったく新しいシステムということで、「西多田」がふさわしいのではないかと思いました。

— 施設長の鐘堂様をはじめ、スタッフの皆様のご協力で貴重なデータを収集できました。鐘堂様にはいつも朗らかにご対応いただきまして…

鐘堂様:笑顔があふれる施設づくりを心がけておりますから…介護スタッフが中心ではありますけど、全ての職員もかかわりますのでね、ご入居者様やご家族に喜んでいただくことを最優先に取り組んでます。

— 通知が届いたりして、業務のお邪魔になったのではないかと懸念しておりましたが、副施設長の木村様はいかがでしたか?

木村様:人の動きが線で描かれた確認動画を見ると、こんなふうに動いているんだな~とか、普段目にすることのない動きなどが見られて、面白い体験でした。

— 施設スタッフの方々の目配りや心配りもあって、実験期間中に実際の転倒はありませんでしたが、ケアビジョン開発チームで居室内で転倒させていただきました(笑)
もちろん全てリアルタイムの転倒検知とアラートが確認できました。

自立者の転倒検知の意義


— 日本老年医学会のステートメントにもありましたが、介護施設において万全の策を講じていても転倒は発生してしまうと…入居者様のお体等の状態によっては転倒が発生してしまうものと認識しておりして、転倒の発生時対策と予防策の見直しのためのツールとしてケアビジョン開発を進めてまいりました。

古賀様:いちばん最初に導入したのが、介護施設向けの睡眠の見守り(睡眠センサー)です。実際に眠れているのか眠れていないのかといったところは目視で判らないところがあります。夜間帯、安否確認のために何度もお部屋を訪問するんですけど、ぐっすり休まれてるときに行って睡眠の邪魔したくないな…と。排泄の介助についても、深い眠りの中で起されるのは誰でも苦痛です、365日それが続くのは良くない。眠りが浅くなったときとか覚醒したタイミングでわれわれが介入できれば睡眠の邪魔にならずぐっすり寝てもらえる。その一助として睡眠の見守りシステムを先駆けて導入しました。

鐘堂様:「西多田」では離床が危ない方など(入居者様の)2割程度の方にはマットセンサーを使用しています。正和会グループの他の施設では抜重センサー等を導入しているところもございます。

木村様:アラートが鳴ったらすぐに駆けつける体制です。介護スタッフだけでなく全員で意識して取り組んでいます。

鐘堂様:入居者様の“健康増進”という観点から、なるべく多くの方が自立を続けられる環境を提供することも大切にしてゆきたいところですね。

— ケアビジョンは、入居者様の八割に該当する自立して行動できる方々、つまり離床センサーの対象にしなくていい方々について、行動を制限することなくAIが見守る仕組として開発したものです。
入居者様の機能維持・改善や健康増進のための自立と安全管理の両立を目指しております。
実証実験の約2か月間の誤検知率は3%未満でした。スタッフの方による掃除などを誤検知したものでしたが、夜間の就寝時間帯ではそういうことも起こる確率はもっと小さくなります。

鐘堂様:スタッフの眼の届かないときなど、AIがしっかり見守るのはいいですね、しかも転倒検知の精度が優秀ですね

徹底したプライバシー配慮


鐘堂様:それと、入居者様の画像が誰にも見られないのは、プライバシー配慮としていいですね。

関節位置だけを抽出して姿勢動作を認識するAIですので、検知するAIすらも入居者様の姿を見ていないということになります。

木村様:あの線の(AIがつくる)動画で何が起きたのか状況を確認検証することもできるのがいいですね、いろいろな対策の見直しに活かすことができます。

鐘堂様:あの線で転倒とか判定するんですか?

— 実は、あの線も転倒検知した時だけ、人間に解るように後から付けているんです。AIは姿勢や動作の認識を関節位置のデータだけでやっていますので、画像はおろか点も線も見ていないんですよ。(笑)

古賀様:プライバシーへの配慮が厚いのは入所者様のご安心にもつながりますから

やわらぎの里西多田 施設長 鐘堂徳一様

夜間巡回代行の意義


— 実証実験の成果から、就寝時間帯の訪室巡視の一部代行に活用できるということで、ケアビジョンを夜間巡回代行AIシステムとしてサービスインを予定しております。

古賀様:就寝時間帯も最善をつくして入所者様のケアにあたっておりますから、夜勤当直を減らすとかは考えません。

— 人員削減とかのためではなく、あくまでも入居者様の安心安全を確保しつつ夜間に静寂時間を生み出すというのが目的です。

鐘堂様:入居者様ファーストで仕事をしていますと、作業時間が足りなくなってしまうということがありますね。働き方改革は介護施設でも必要と考えておりまして、残業が長引いて長時間勤務にならないよう気をつけておりますが、当直スタッフは訪室巡視やナースコール対応で手一杯になることが往々にしてあるんです。
AIが代わりに見守ってくれて、スタッフのための時間を創り出すことができるようになると、スタッフにとっては大きな手助けになりますね。

木村様:入居者様の昼間の活動をなるべく活発にして、夜間は安眠していただくというリズムを大切にしていますが、眠りの浅い方もいらっしゃいますので、夜はなるべく静かにして熟睡していただく時間を長くしたいところです。

— ケアビジョンなら、AIが音もなく、扉を開けることもなく、見守り続けますので、安心してお休みいただけるようになります。

ケアビジョンへの期待


— ケアビジョンは、「介護職員をしあわせにするサービスは、きっと入所者も幸せにする」というスタンスでサービス提供をしてまいります。
これから先もAIの進化はつづけてまいりますが、期待する機能などおありでしたらお聞かせください。

木村様:スタッフが見えないところでの入居者様のふるまい(ADL)を観察できるようになるといいですね…線のやつの録画があるといいです。

— そういったオプションは射程圏内にあります。頑張ります。

古賀様:入居者様ごとに、この方の場合はこの姿勢のとき、といった個別の通知になると素晴らしい。

— ケアビジョンAIが辿り着く目標地点ですね。頑張ります。